近年注目を集めている「民泊」。首都圏ではホテルと同じような役割を民泊が果たしてしまい、価格競争に陥ってしまっています。そのような中で、他の民泊とは一線を画すために、日本料理などを出しているホストもいらっしゃるでしょう。実は、民泊の許可以外にも、飲食業の営業許可も必要だということ、知っていましたか?今回はどのような許可を取れば飲食の提供ができるのかについてお話ししていきます。
1. 民泊で飲食を提供するには許可が必要?
冒頭でも述べた通り、民泊は「人を泊める」というサービスです。一方で料理の提供は「飲食物を提供する」というサービスです。ということはそもそも、「民泊の許可を得た=飲食も提供できる」という構図にはなりません。
ではどのような許可が必要なのかというと、「食品衛生法による営業許可」が必要になります。
ちなみにこの営業許可は、ホストが一方的に料理を提供する場合の話であって、ゲストと一緒に料理を作ること自体は営業許可は必要ありません。というのもゲストが料理人になっており、食中毒などは全てゲストの責任であるからです。
2. 食品衛生法は2種類の営業区分がある
食品衛生法において「営業許可」には、飲食店営業と喫茶店営業の2つの区分があります。
① 飲食店営業
一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、弁当屋、レストラン、カフェ、バー、キャバレーその他食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業のこと。喫茶店営業に該当するものを除く。
② 喫茶店営業
喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業のこと。
このような営業区分になっています。民泊ではディナーなど、きちんと調理したものを提供するので、必然的に「飲食店営業」になりますね。
ちなみに、レトルト食品を電子レンジで加熱する行為や、お菓子類を袋から出してお皿に盛り付ける行為、ペットボトルのジュースをグラスに注ぐ行為も調理に該当するので、「飲食店営業許可」を取得する必要があります。
このようにみると食品衛生法はかなり厳しいことがわかります。
3. 民泊で「飲食店営業許可」を取得するために必要な条件
ここまで、民泊で料理を提供するのであれば飲食店営業許可を取ることが必須ですよというお話をしてきました。ここからは何を準備すれば営業許可がもらえるのかについてお話ししていきます。
3-1. 民泊で「飲食店営業許可」を取得するために必要な書類
飲食店営業許可は基本的には保健所が窓口になっています。そのため、必要書類を揃えた上で、保健所に行く必要があります。ここでの必要書類は以下の通りです。
・営業許可申請書
・営業施設の概要書
・届出書(食品衛生責任者設置届)
・食品衛生責任者の資格を証明する書面
・営業施設の平面図
・登記事項証明書の原本(法人の場合)
・使用水の試験成績書(水道水以外の水を使用する場合)
・申請手数料(収入証紙)
3-2. 「飲食店営業許可」を取得するために民泊施設に必要な設備
飲食店営業許可は先ほどお話しした書類だけでは通りません。もちろん、設備を整えた上で書類を提出することが必須です。ではどのような設備が必要なのでしょうか?
・流し2台
・それぞれの流しに独立した給水栓
・従業員専用の手洗い用設備
・調理場を区画するためのドア
・扉付き食器棚
・温度計
・耐水性、排水性のある床
・客室またはトイレ内に手洗い用消毒設備
ざっと見る限り、「飲食店営業許可」の取得はそれほど煩雑ではありません。強いて言えば流し台が2台必要ということくらいでしょうか。
かといって、何もかも一人で抱え込んでしまうと逆に時間がかかってしまいます。保健所と相談しながら手配を進めて行くことをおすすめします。
4.民泊における飲食店営業許可証の期限は?
ちなみに意外かもしれませんが、「飲食店営業許可」には期限があります。保健所によって期限はまちまちですが、一般的には5年から8年の有効期限が定められています。
更新の時期が来たら、既存の営業許可証と申請手数料を保健所の窓口に提出します。申請が遅れると、再び新規申請扱いとなり、手続きが増えてしまいますのでご注意ください。書類を提出すると、1週間以内に施設検査があり、その後2~3日で新しい営業許可証が届きます。
5. 民泊で飲食を扱う時の注意点
「飲食店営業許可」を取得すると、ゲストをキッチンに招き入れ、料理を一緒に作ることはできなくなります。「飲食店営業許可」を取得したということは、営業です。民泊に付随する体験メニューとは異なることに留意してください。
食品衛生法に基づく営業許可基準もしくは営業許可期間に関する違反は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金となります。違法民泊より重たい罰則ですので、安易にゲストをキッチンに招き入れることはやめましょう。
むしろ、美味しいお料理を提供して、ゲストの満足度を高めることを意識してみてはいかがでしょうか。
6. まとめ
このように民泊という旅館業であれど、飲食の提供には飲食の営業許可が必要になります。バレないと思っていても、意外と行政の人が黙って泊まりに来ていたという話もよく聞きますので、どこでバレてしまうか分かりません。バレる前に適切な対応を心がけておく方が良いでしょう。